ニューヨーク在住歴8年のロン毛と坊主が綴るブログ「ロン毛と坊主とニューヨーク」運営者インタビュー

「ニューヨーク」をキーワードにネットサーフィンをしている中で見つけたブログ「ロン毛と坊主とニューヨーク」。ブログのタイトルからわかるように、腰以上に長い髪のロン毛のWataruさん(以下:ロン毛)と3ミリ坊主のRyoさん(以下:坊主)が居住の地ニューヨークで綴るブログである。




ロン毛と坊主とニューヨーク


早速ある記事をクリックして読んでみると、内容がとても面白く、次の記事、また次の記事へと読み進めたくなる内容のものばかりであった。そのため、せっかくニューヨークに来たのだから、彼らに直接話を聞いてみたいと思い、メールで連絡をすると、すぐに快諾。今回は彼らが共に住むブルックリンの自宅に招待いただき、お話を伺いしました。


彼らの目に映るニューヨークとは一体どのようなものなのか?早速ご覧ください。


ーはじめまして!早速なのですが、まずはお二人がニューヨークへ来たきっかけは何だったんですか?


ロン毛:僕はもともとニューヨークに憧れがあって来たわけではないんです。一応県内では進学校と呼ばれる学校に通っていたんですが、中・高とテニスに没頭し過ぎて、いざこれからの進路を考える時期を迎えたときに、このままでは大学にも行けないと気付きました。もちろん、大学もピンキリなので、特に選ばなければどこかには入れたと思うのですが、日本で中途半端なところへ行くよりは、この際海外の大学に行った方が得かなと考えました。学力云々関係なく、とりあえず、アメリカの大学卒という一つのブランドを手にすれば、帰国後も就職には困らないのではないかと笑 その当時はアメリカの都市で、ニューヨークくらいしか知らなかったので、ニューヨークへ行こうと。


坊主:僕は高校時代にHIP-HOP音楽をよく聞くようになって、そこからストリートファッションに興味を持ち始めました。「HIP-HOP」と「ストリートファッション」、この二つのキーワードを並べたときに、ニューヨークへ行ってみたいと思うようになり、高校卒業後、まずは語学力の基礎を身に付けるためにカナダへ半年間留学し、その後、ニューヨークでファッションを学べるニューヨーク州立ファッション工科大学(通称:FIT)への進学と同時に、ニューヨークへやって来ました。


ーそこからお二人がどのように出会い、このブログを始めるに至った経緯を教えてください。


ロン毛:坊主と違って、僕はファッションを専門に学んでいたわけでなく、大学ではビジネスを学んでいたのですが、もともとファッションには興味があったので、その当時、ストリートスナップを掲載しているWeb媒体を多く目にするようになったこともあり、空いている時間を活かし、興味本位でストリートスナップを始めてみました。単純にカッコ良くて、センスの良いニューヨーカーをブログで紹介したら面白いのではないかと思ったんですよね。しかも日本人でまだやっている人もいないだろうと思って始めたのですが、あるイベントで坊主と初めて出会ったときに、自分と同じことをやっている人がいることを知りました。しかも自分よりも先に。。


坊主:そのイベントでロン毛と出会ったのは初めてだったんですが、彼がストリートスナップをやっていることは彼のブログを見ていたので、知っていました。僕は当時インターンをしていたショップのオーナーがストリートスナップを撮影しては、会社のブログにアップしているのを見て、興味を持ち始めました。その様子を見ていて、これなら自分でもできるのではないかと思ったのが、きっかけです。お互いファッションに興味があることもあり、何より「ストリートスナップ」という共通点があったので、打ち解けるまでに時間は要しませんでした。


ロン毛:坊主の方が半年くらい先にストリートスナップを始めていたのですが、その当時、いろんなメディアから取材依頼が来ていて、僕は羨望の眼差しでその様子を見ていました。ただ、お互い撮るものとかが違ったので、特にそこで過剰に敵対視するということは全くなかったのですが。


坊主:最初は楽しかったですね。しかも続けていると、いろんな縁がきっかけで少しずつ仕事にも繋がり始めていたので。ただ、僕自身は特に仕事というよりも趣味の延長でやっていたことなので、最初は楽しかったんですけど、徐々に飽きてきちゃったんですよね笑 その時に、ブログを書くにしても違った角度からというか、もうちょっとライフスタイルに重きを置いて自由に書いてみたいと思ったんです。そして、早速ブログを公開して半日後ですかね〜。ロン毛からすぐに連絡が来ました。笑


ーブログ公開から半日後!レスが早いですね笑


ロン毛:はい、一緒にブログをやらないか?と。笑 自分もちょうど同じようなことをやろうと思っていて、坊主が先に始めたのを知って、すぐに連絡しました。


坊主:誘われたものの、やっぱり一緒にやるのは違うのではないかと思い、最初は断ったんですが、最終的にはロン毛に口説かれて一緒にやることになりました。というか、ブログをやらないかと誘われて最初に会った時に、既にロン毛の中では企画がまとまっていて、話を聞いているうちにお互いやりたいと思っている方向性も同じだし、「一緒にやってみたら、面白いかも!」と思ったんです。




ーお互いの趣味や好きなこと、さらにはタイミングなどいろんな要素が重なってのブログ開設。運命的な何かを感じずにはいられませんね笑 ニューヨークに住んでる人たちの中で、他にもブログをやっている人たちはたくさんいると思いますが、他のブログとの違いやこだわりなどはありますか?


ロン毛:僕と坊主は実は同年代(88年世代)なのですが、意外とこの年齢である程度長い期間ニューヨークに住んでいる人は少なくて、それでいて本気でブログに取り組む人ってほとんどいないと思うんですよね。長期間ニューヨークで生活しているからこそ見えてくることや伝えられることというのは、表面的なものではなく説得力を持たせられるのではないかと。そこがニューヨークに来たばかりでブログを書いている人たちは違う、自分たちの強みになっているのかなと思います。


坊主:ただ僕らが日々ブログの中で綴っている考えとかそれこそニューヨークという街の見方が、全て正しいとかそういうことではなくて、あくまでロン毛と僕という存在のフィルターを通して発信していることなので、捉え方はブログを読んでくださる方に委ねたいと思っています。


ロン毛:そうだね。何か問題提起を起こして、それに対していろんな人の意見を聞けた方が面白い。コメントなどを見て、そういう考え方もあるのか、と気づかされることもたくさんあるから。このブログを書いている目的を挙げるのなら、僕たちのブログを読んだ人たちが私たちの考えを通して世界には多様な価値観があるということに気づいたり、自ら物事を考えることの一つのきっかけになれたら嬉しいなとは思っています。あとは、日々自分たちがニューヨークの暮らしの中で感じたことや考えをブログに記事としてアウトプットすることで、思考を整理しているということもあります。


ーなるほど。確かにニューヨークで暮らしている期間やその人の考え方によっても街の見方というのは大きく変わってくるのかもしれませんね。それでは、お二人から見て日本(東京)とアメリカ(ニューヨーク)の違いって何だと思いますか?


坊主:やっぱり日本だと「世間の目」を意識しすぎて、ときどき息苦しくなるときがありますよね。こっちだと、世間の目なんか気にせず、自分が「こうだ!」と思ったり、考えていることを貫き通しますから。そういう人が多いから、日本では「えっ」と白い目で見られるような出来事や振る舞いもここだと日常茶飯事なので、もはや誰も気にしないんですよね。それこそ、地下鉄なんか乗っていると、いきなり車内でダンスや歌や演奏が始まったりします。そういったことは日本ではあまり見る機会がありませんよね。


ロン毛:そして、なぜか海外ではそのような光景を目にすると、「さすがパフォーマーの街だね」と、一様に賞賛したり、感動する日本人観光客は多いんですけど、この前SNSで流れてきた動画の中で、日本で同じようなことをするパフォーマーに対して反応が全く異なることに驚きました。


ーどのような反応だったのですか?


ロン毛:それは、日本の電車の車内で男性が自分の主張を述べるという内容のもので、「日本にもこんな人がいるのだなあ」と物珍しく見ていたのですが、コメント欄を見ると”迷惑”、”マナー違反”といった書き込みが大半なんですよ。それでも批判している人たちがニューヨークに来てパフォーマンスを見れば称賛する人が大半でしょう。しかし、私たちのようにその地で暮らしている人間からすると、毎日繰り広げられる車内でのパフォーマンスには嫌気をさしている人たちも多いのも事実です。結局は良い面も悪い面も表裏一体のようなものなので、それが日本と海外で違うからといって、その違い自体を批判する必要はなくて、違いを知って多角的に物事を見れるようになるとモノの見方も少し変わってくるように思いますね。


坊主:あとはみんなニューヨークというと、なんとなく"カッコイイ"というイメージを持っているかもしれないけど、ニューヨークに住んでいて、改めて日本ってすごくカッコイイじゃんって思うようになりました。それこそ、こっちに住んでいる外国人に国籍を聞かれた時に「日本」と答えると、「まじかよ!日本はかっこいい国だよね」と答えてくれる人はすごく多いんです。


ロン毛:僕はフリーランスで今は仕事としてストリートスナップの写真を撮りに街に出たりするんだけど、一日中街にいても、ニューヨークで本当にオシャレだなって思う人って、一人、二人見つけるのがやっとだったりするんです。雑誌での海外スナップなんかは私たちのようなスナップを撮るフォトグラファーが時間をかけて厳選したお洒落な人が掲載されていますが、それは必ずしもニューヨーカー全員がお洒落でかっこいいというわけではないのです。だからこそ"ニューヨーク"というネームに踊らされる必要はなくて、自分たちが日本人であること、日本はかっこいい国であることにもっと多くの人たちが気づいて自信を持って欲しいなと思います。ニューヨークから見たら日本という国は外国であり、日本人が憧れるようにこっちの人たちも日本をそういう目で見ているんですから。


ーそうなんですね。ちなみに、ニューヨークで暮らし始めて、日本のことを改めて良い国だと感じると仰いましたが、それでもニューヨークで暮らしている理由って何かあるんですか?




ロン毛:・・・・・。




坊主:・・・・・。


ロン毛:特にないですね。


坊主:そうだね、ないよね。


ーそうなんですか笑 理由がないのになぜ?と質問してもおかしいのでしょうが、もう少し詳しく教えてください。


ロン毛:ニューヨークにどうしても留まりたいわけではなくて、単純に僕はストリートスナップなどを中心にフリーランスとしてこの場所で生活ができていて、坊主も今はアパレルショップで働き収入を得てこの場所で生活できているからなんですよね。生活が成り立つのであれば、もちろん日本に戻っても良いし、他の場所でも良いと思っています。


坊主:本当にそのときやりたいと思ったことに挑戦したり、そのときの流れというものに乗っかりながら、今に至ったという感じです。少なからず今現在は、僕たちが生きるのに必要な仕事だったり人間関係がニューヨークにあるという状態なのでここを拠点としていますが、動く理由などがあればこの街に固執するつもりもありません。


ーなるほど。こんなことを聞いた上でこの質問は愚問になってしまうかもしれないのですが、将来やりたいこととか、何かプランにみたいなものってあったりしますか?


ロン毛:そうですね、特にないですね笑 あっ、海賊団作りたいです。


ーん?海賊団?


坊主:海賊団作りたいってちょいちょい言ってるよね。


ロン毛:海賊団っていうのはあくまで例え話ですが、ニューヨークでクリエイティブ集団のようなチームを作りたいんですよ。今までフリーランスとして基本的には「個」で活動してきた中で、今回のブログのように友人とチームアップしてみてチームの強みのようなものを感じました。一人ではできないこともチームならできることがあると思っていて、それぞれ突出した強みを持った人たちを集めて信頼できるチームを作り、何か面白いことができたらと考えています。ただ、これもまだ漠然と考えているだけなので、具体的にやりたいこととかは決まっていません。もし、本当に面白い人たちを集められて、具体的にやりたいことなどが固まれば、法人化して本格的にビジネスとしてやる可能性もあるかもしれないし、単純に趣味として進めるのかもしれません。それもそのときの流れによりますよね。


坊主:結局先のことばかり考えて計画立てても、仕方ないじゃないですか。先のことなんて何が起こるかわからないし、自分自身の考えやそれこそ社会情勢も変わってるかもしれませんし。


ロン毛:そうだよね。10年前に、今のように世界中の誰とでも気軽に連絡が取れる社会を想像できた人ってほとんどいなかったじゃないですか。なので、そのときの流れに乗りながら、やりたいと思うことがあれば、それを全力でやるって感じですね。


ーお二人が旗揚げした海賊団がニューヨークを舞台に暴れまわる姿を是非見てみたいです!最後に、僕たちは「海外に出る日本人を増やす」ことを一つの目標に活動していたりするのですが、近年では留学生が減っているという情報も耳にします。お二人は「海外に出る」ということについてどのようなお考えをお持ちですか?


ロン毛:移動時間やコスト面などで、海外に出るハードルはどんどん低くなっているのだから、行きたい場所があるのであれば、あれこれ考えるより前にまず行動すれば良いと思います。


坊主:よく日本にいる友人や知り合いが「ニューヨークに行きたい」「私もニューヨークで暮らしたい」とか言ってくれるんですけど、実際にはそのうちの8割くらいは来ませんよね。 その他にも「英語が話せないから」とか「治安が悪いから」とか何かと言い訳を並べる人もよくいるんですが、反対にどれくらい英語を話せたら、どれくらい治安が良かったら安心して来れるんだ?と思います。ニューヨークに限っていえば、一部危ないと言われるエリアを除けば治安も日本とそれほど変わらないですし、英語も旅行程度ならそれほど必要としませんから。とにかく、行ってみたい場所があるのであれば、すぐにでも行ってみたら良いんじゃないんですか。


ロン毛:あとは、ニューヨークに限って言えば、僕たちの自宅の一部をゲストハウスとして貸し出しているので、ここに滞在してもらえれば、海外生活が長いなりに多少なりともアドバイスなどはできるかと思います。もちろん、時間が合えばオススメのスポットやお店を紹介することもできますし、庭でBBQをしたり、お酒を飲みながら語らったりと、ここでしか味わえない時間というのも過ごせるかと思います。


ーゲストハウスとして泊まることができるんですね!


ロン毛:はい。結構ゆったりとしたスペースが確保されていますし、ゲストの方にここに泊まって良かったと思える場所を提供したいので、居心地良い空間作りにもこだわりました。


ということで、ゲストハウスの一部をご紹介したいと思います。




こちらがゲストルームの様子。清潔さ、快適さ、雰囲気すべてにおいてクオリティが高いです。




建物自体の築年数は古いものの、居住空間はほぼリフォームが施されています。しかしながら、壁などはそのままとなっており、敢えてむき出しの岩壁やレンガ壁がブルックリンらしい雰囲気を醸し出しています。




こちらのベッド以外にソファもベッドとして利用でき、さらには、取材当時にはありませんでしたが、現在は新たにフルサイズのソファベッドを追加したとのことで、複数での利用でも十分にゆったりと寛げる空間になっているようです。宿泊スケジュールや宿泊料金などについては直接お問い合わせしてみてください。




特に個人的にお気に入りなのが、今回取材場所として利用させていただいた外庭のスペース。お二人もお気に入りとのことで、朝起きてここでコーヒーを飲んだり、夜寝る前にここでゆったり過ごす時間が何よりの贅沢だったり。今後はこのスペースにウッドデッキを敷く予定とのことで、1カ月後、半年後、1年後にはもっとその様子が変わっているかもしれませんね。


2016年6月からゲストハウスとしての貸し出しを始め、すでに多くの日本人旅行者の方が滞在されているとのこと。宿泊者の満足度も高く、彼らもここでの出会いを楽しみにしているそうです。


ニューヨークに訪れる予定の方は是非利用してみてください。




取材後、改めてお二人のブログを読み直していると、ただニューヨークに住んでいるから何かが変わったという内容のものがないことに気づきました。もちろん、その土地での暮らしがその後のアクションを選択する上で多少なりとも影響を及ぼしているとは思うのですが、結局は何を感じ、それをどのように考え、自分がどう行動するかというのは、自分次第でしかないわけで、それはどこにいても変わらないのではないかと思いました。


さらには、国や文化が違くても、根本的に人間の本質というのは変わらないのだなと感じさせられることも多く、ニューヨークに住みながらも、どこか俯瞰しながらこの街のコト・モノを捉えている視点が一つに魅力になっているのかなと思います。


ロン毛さん、坊主さん、今回はありがとうございました!ニューヨークに興味のある人ない人も是非一度ご覧になってみてください。


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出身/宮城県 在住地/京都府
ライター。宮城で生まれ育ち、大学から東京へ上京し、海外での滞在を経て、今現在は京都で事業を行なっています。「泊まる〜暮らす」の導線づくりをしています。
Comments
Total: 2
2016-09-01 00:24:13
ありがとうございます!ロン毛さんに関しては、ニューヨークに来てから髪を切っていないそうで、ニューヨークの全てがその髪に詰まっているそうです笑
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2016-08-31 11:02:48
考え方が伝わってくるような感じで、面白いインタビュー記事だった。「ロン毛と坊主と、、」というタイトルだとこのまま髪型ずっと変えないのか、気になってしまうけど。

自宅の一部をゲストハウスとして貸し出すライフスタイルもカッコいいよね。
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